6月 「 冬の温室 」


(6月は,ほとんどの日を事務所で過ごした. 時折打合せで出掛けたり,模型材料調
達のため画材屋にでかけたりしていたのだけれどしかしほぼ, あるプロジェクトの作
業ををひたすらもくもくとやっていたのだった. 一年のなかでこんなときがたまにある.
気分転換に近所を散歩する. 幸い,近くには大きな公園があったり毎日ひらいている
青空市場があったりして,散歩しながらプロジェクトについて話あう場所には事欠かな
い.)
この季節の散歩は楽しい.公園の中を歩くと六月の,少し湿った土と植物の匂いが感
じられる. 公園の中にある植物園に入るとそれをもっとはっきり感じる.大きな池のそ
ばを歩き, 紫陽花園を通り抜け奥まで進むと 大きな木々に囲まれた森にたどり着く.
頭上には新しい葉をつけた木々. そこでは鳥が鳴き, そしてときどき猫と出会う.
ぼくたちの相手をしてくれるのもいれば, 一定距離を保ちつつこちらを伺っているのも
いるけれど,ここの猫は総じてみんなフレンドリー,だと思う.

植物園といえば今年の冬の2月,京都の植物園に行った.大阪を出て車で走っている
とだんだんと雪が降り始める.着いたのは真っ白の植物園.雪はすでにやんでいて青
空が見え始めた.けれどもこんな日に植物園に来る人も少なく,目当ての温室には当
然人影がなかった. 雪に囲まれたガラスの温室の中はむせ返るほどの湿度,室内は
鮮やかな,つやつやの魅力的な植物で溢れている. さっきまでの銀世界はうそのよう
だ.
どの植物も,それぞれ独自の形を持っている.熱帯の植物は特にそう思う. 日々ふれ
ているものからは考えられない葉のつき方をしているし個性的な色,なによりその佇ま
いは何にも形容しがたい. この温室にもある「ビカクシダ」という植物をぼくたちは事務
所で育てている.もちろんこんなに大きくはないけれど.
時間をかけて見て回り温室をでたころには太陽が顔を出していて, 温度が少し上がっ
てきたせいか雪も少し融けはじめていた.








ビカクシダ