3月

事務所近く,住宅街の一角に長らく(おそらく)放置されたままの土地がある.それは結構ひろくて(街区ブロックの五分の一ほどを占めている),以前はなににつかわれていたのかわからないのだけれど,だれかに手入れされることもなく伸び放題に育つ無花果や枇杷の木
そして雑草,自然に育った雑木たちが枝を広げている.

フェンスで囲われているため中に入ることはできない,しかしだれも入ることができないからよりそれらの自生感が強まっているその場所をフェンスごしに覗き込むと,だれかが放置したスチール製の事務椅子や粗大ごみがそれらの植物のすき間から見え隠れしている(入り口もないのにどうやって入れたのだろう?).椅子なんかは大きく張りだした枝の下,脚部が草に隠れ座面と背もたれのみが見えている状態,そこはのら猫の気に入りの場所らしくときどき丸くなって気持ちよさそうに眠っているやつを見かける.

春にかけて植物たちは自分のペースでどんどんおおきくなりそれぞれのスペースを確保しあう.そして春を過ぎて初夏にさしかかる頃,
ほぼみどりの塊状になってしまう.もうこうなると木と木の判別が難しい,そしてそれはおおきなひとつの生き物的な様相だ.(事務椅子も呑みこまれてすでに見えない)真夏にもなると太陽に照らされたその場所からは,思わず息がつまりそうになるほどの草いきれが鼻を突く.入ることはできないがフェンスの外から,その中の様子をあれこれと想像するのはとても楽しい.